第四章 初めての都会とラクロス

恋の原点は人生の原点

新しい環境は人を成長させてくれる。学校でも仕事でも、場所や人間関係が変わると、心身共に変化が訪れる。私は高校3年生の甘酸っぱい恋愛をした後、高校を卒業。

そして、神戸市内の大学へ進学した。

子供のころからやりたかった物理学を学ぶためだった。私の学力で入れるところが丁度その学校しかなく、また修学旅行で行った関西が、自分になんか合っているような気がしてその大学を選んだ。

人生の転機はいつ訪れるかわからないが、大学在学中にはいくつもあった。今振り返るとそれがなければ今の自分はないとはっきり言うことができるし、成長の糧になっている。

そんな人生の転機の第1回目はラクロス部への入部から始まる。4月は大学新入生にとって、部活やサークル選びの月である。翌5月に徐々に決まり始め、6月には本メンバーとなる。私は3つのサークル・部活で迷っていた。

1つはマンドリン・ギター部。小さいギターを演奏するサークルのような少し本気の部活だった。4月の見学会でも一番仲良くしてもらった部活だったし、結構入る気でいた。

2つはオーケストラ部。小さい、本当に小さい願望だったのだけど、私はチェロがやりたかった。吹奏楽部の延長だったこともあったり、クラシックが好きなのもチェロをやりたかった理由。ただ、部室が薄暗かったので気分が上がらず、結局あまり行かなくなった。

そして3つ目がラクロス部である。高校時代に文化部である吹奏楽をやっていた私からすれば、なかなかの選択肢である。そして、私はラクロス部に入ることになる。

なぜラクロス部を選んだのか。それは体験練習会でゴールを決め、その感動がなんとも心地よかったからである。クロス棒をチームメンバーで頭の上に掲げ、雄叫び、勝利を祝う…吹奏楽部ではそんな風景はなかったから、私にとってはとても新鮮だった。

 

しかし、やはり「部活」。サークルのように遊び半分というわけではなく、練習もきつかった。週に2回の練習は気がついたら週6回になっていた。勉学の時間も取れず、徐々に授業に遅れ始めていた。

物理学部なんてものは勉強してなんぼだし、なにより実験で忙しい。実験の予習・復習は必須。なので、どんどんと部活が重荷になり、心身共に疲弊していった。

心臓からコポコポと音がする…

練習がきつく、心身に限界が来たある朝、私は胸の痛みで起きる。胸に激痛が走り、動けなくなった。時間がどれぐらい経っただろうか。痛みが引いて起き上がると、胸から「コポコポ」と音が聞こえた。

それはお風呂でおならをしたときのような音である。気泡が胸の下から上に向かってくる感じ…これはやばいと思った。そして、すぐに私は医者に行った。

検査結果は問題なし。そんなことはないと思っていながらも、原因はわかっていた。そう、辛いラクロスの練習と精神的な追い詰めである。ストレスで症状が出たのである。

それは大学生の私でもなんとなく感づいていた。ラクロスのことを考えると胸がきゅっと締め付けられ、頭が真っ白になるからである。

 

症状は心臓以外にも出ていた。当時の体重は身長177センチに対して56キロしかなかった。(この身長に対する標準体重は68キロである)。病院から帰ってきたとき、自分の体を鏡で見たら肋骨が浮き出ていた。

その時ことの重大さを理解したのは今でも覚えている。バイトする時間もなかったし、仕送りのほとんどは家賃で消える。そんな中で十分な食事も取ることができなかった。それが体重減少の原因だった。

 

そして私は7月にラクロス部を辞めることになる。

初めて考えた「やりたくないことをやること」の意味

ラクロス部はとても楽しかったし、先輩や同期とも仲が良かった。ただ、生活リズムや金銭面でのストレスが私に大きな負担だった。残りの4年の大学生活をラクロスに捧げることはできなかった。そしてなにより、体が悲鳴を上げていた。

若いながらも私はいろいろなことをその時に考えた。やりたくないことをやり続けることはどういうことが起こるのか。それは「心身の病気を招く」だった。考えてみれば当たり前のことであったが、やはりやってみないとわからないものである。

一方でやりたくないことをやっていたとしても、それをやめられないこともある。私の場合は先輩の目だったり、一度始めたことを続けなければいけないという意識があったように思う。途中でやめることは逃げ、だと思っていたかもしれない。そんなことが退部を先延ばしにしていた。

だけど、体は正直だからそんな思いとは裏腹に調子を崩し始める。心身のズレがあるほど、人は病気になりやすいのかもしれない。

◯まとめ

・人はやりたくないことをやり続けると病気になる。

・やりたくないことを止める勇気を持つことが、自分の人生を変える。

・頭でわかっていても、実際にやらないとわからないことがたくさんある。

 

意識高い系の学生との出会いへ続く