第十二章 同棲と自己肯定感

ニート生活も板についてきた頃、私は同棲を始めた。ピースボートに乗る前から付き合っている彼女・早紀ちゃんとだった。同棲する前に始めた転売業が思いのほか花を咲かせ、とりあえず生活ができるようにまでなった。

また、早紀ちゃんの会社退職のタイミングも重なって、私の地元である静岡に一緒に過ごすことになった。2016年3月のことである。

 

今考えると、よく1人のニートが彼女と同棲し、今では結婚までできたなと思う。それは家族のサポートを始め、早紀ちゃんのぶれない心。また相手家族の広い心の理解のように思う。本当にありがたい限りである。

さて、転売業では私は大きな成長を感じたことがある。それは生まれて初めて赤字を出したことだった。その額3万円。なんのことない額だと思うが、当時の私からすれば相当な額だった。

簡単なミスで起きたものだったが、それ以上のダメージを私に与えた。手が震え、夜は眠れなくなる。そんなことが1日だけ続いた。しかし、ここで私はふと我に帰る。

「損失を出したことと私の価値にはなんの関係もない。また、それによって自分を責めるのには意味がない」

このことを3万円の損失から学んだのである。翌日、すぐに手の震えは収まり、よく眠れるようになった。とても短かった落ち込みである。ただ、このとき初めて「自己肯定感」という言葉を自分の中で自覚するようになる。

個人的な理解として自己肯定感とは、どんなときでも良い面を見つけ、自分を肯定すること。また悪いことが起きてもそれを自分の価値と混同せず、否定しないことだと私は思っている。

今回も「3万円の損失=私はダメな人間」だと思っていたから手が震えていたわけだが、この式に関係性がないことを理解すると心が軽くなったのを覚えている。これは私にとって今後大きな意味を持つことになる。

◯自己肯定感の自覚と受け入れること

自己肯定感は物事のやること・なすこと全てに影響する。何か物事を進めるとき、自分を肯定して、できると鼓舞することができれば、それなりの結果がついてくる。同じスキルを持っている人が2人いたとしても、自己肯定感の有無が結果に影響するだろう。

また、この自己肯定感を自覚できなければ、そこから改善することもできない。「あ、今自分で自分を責めているな」「あ、今自分で自分を肯定しているな」というような、客観的な視点が必要なのである。

自己肯定感を自覚して、それを受け入れられるようになると、物事に対する姿勢が少しずつ変わっていく。不安や恐怖で恐れないようになり、ちょっとやってみようという前向きな気持ちが生まれる。転売なんてものは常にチャレンジの連続だったから、そういう意味では自己肯定感は必要な仕事であるように思われる。

◯パートナーの存在

自己肯定感を自覚し、自分を肯定することができても、やはり1人で肯定し続けることは難しい。私が3万円の損失を出し、すぐに回復できたのは何より早紀ちゃんのおかげである。これは言いすぎても言い過ぎることはない。彼女がどんなことにも彼女でいたから私はいつもどおりの私でいることができた。これは今になって気づいたことである。

結婚の意味、というものは人それぞれ違うが、私が思うのは私らしくいられること、そして相手が相手らしくいられること。このことに意味があるのだと思う。相手がいることで自分らしく振る舞え、自分がいることで相手が相手らしく振る舞える。それが渡辺夫婦の結婚の形のようにも思う。

◯まとめ

・事実と自分の価値を切り分けることで冷静に物事を判断することができる。

・常に自分を客観的に見る。それが心を平静に保つことに繋がる。

・パートナーの存在は自分らしくいるために重要である。

最終章 結婚とその先 へ続く